五輪競泳ファイナリスト・F選手-インターハイ10位がオリンピアンになるまで-
オリンピック壮行会で、私が強く印象に残っている思い出があります。
それは、H高校水泳部が初のオリンピック選手を輩出した2008年、北京オリンピックの壮行会によんでいただいた時の事です。
帰り際、お客様をお見送りのため並んでいるH高校水泳部の生徒達に、
「これでオリンピックがイメージできたろう。今度は君たちの番だよ!その時はまた壮行会に呼んでね!」と言ったら、
「当然です!次に行くのは僕です!」と、0.2秒で答えたのがF選手。
えっ!? 私は全員に向けて言ったんですけどね(笑)
ただ、そう宣言したF選手ですが…、高校最後のインターハイは10位。決勝にすら残っていません(泣)
そういう結果になると「オリンピック選手になる!」という目標は夢どころか妄想になり、
やがてシャボン玉の様に消えていくのが普通。
でも、彼の脳は、高校の時からインターハイの決勝ではなく、オリンピックの決勝にイメージを飛ばし続けていたのでしょう。
だから、名だたる世界王者の間に堂々と割って入り、個人種目で五輪切符を奪い取れたのです。実際彼はこの日のスピーチでも、
会場の後ろにいる現役の水泳部の後輩たちに向かって、
『僕は高校時代、決勝にも残れない選手でしたが、22歳で日本代表となり、24歳の今、オリンピック代表になれました。だから、ちょっとくらいダメだからといって夢を諦めず、追い求めていって下さい!』
と熱く訴えてくれました。
オリンピックに選ばれ、「ありがとうございます!応援よろしくお願いします!」だけでなく、こういう発言をすること、
これこそオリンピアンの役割です。だって、結果を出した人の発言は良くも悪くも説得力を持ち、人は信じてしまう。
だから結果を出した時には、この時とばかりに、聴いてくれる多くの人達のイメージや人生観を変える発言をすること、それがトップアスリートのやるべきことなのです。
そんなF選手の発言にも感動しましたが、それを真剣な顔で聴いている後輩の水泳部員の顔を見て、更に感動し、泣きそうになってしまいました。